こんにちは、verita編集部です。
"素材本来の持つ質感を生かし、心地よい存在にすること"が最もシンプルに追求されてできあがったGUEST & MEのシリーズ。前回に引き続き、GUEST & MEのプロダクトデザインを担当された佐藤卓さんへのインタビューをお届けしながら、「日常のちょっと贅沢」について考えてみたいと思います。


使う人にゆだねられたデザイン




佐藤卓さんインタビュー

石鹸をフレグランスとして使おうっていう考え方から、どういうパッケージに入れたらいいかという風に考えていったんですが。石鹸を生活まわりに置くと考えた時に、直にそのままというより、なにかお皿のようなものの上に置くのが自然ですよね。


そう思ったときにパッケージがただ運んだり、包んだり、保護したり、ブランド名を伝えるものとしてではなく、パッケージがお皿の代わりにならないだろうか、というアイデアに繋がっていったのです。


そしてこれ、中を引き出して見た時に、石鹸の断面と。穴をみて「あれ?」って気がつくかもしれない。エンボスでついているグラフィックも上の方に付いていますよね。私は、人の考えたりする能力、知識、知恵を前提にデザインするというのが大切だって、昔から思っているんです。でも敢えてそれをパッケージには書かない、という考え方に至りました。


佐藤卓さんインタビュー

「あっ、こうなってるんだ!」っていう発見。発見してくれても、くれなくてもいい。とにかく、こちら側からなにかを強制するデザインではなくて受け取った人にゆだねるデザインということ。それを、デザインする時に常に意識しています。


デザインにおいて、考えたことを全部伝えることはないということなんですね。使う人が心地よかったり、自分なりに使えればよいわけで、企画した人間の企画したとおりに動かされるというのは心地よくないと思うんです。


だから、パッケージのどこにも「こうやって使ってください」なんてこと、書いてないんです。



環境にとってノイズにならない色合いを考える




リネンウォーターのこのアルミの缶も、紙は紙らしくと同じようにアルミはアルミらしく、それでいいじゃないかと思って。


佐藤卓さんインタビュー

また欲しいと思った時に、どこの商品だったか分かるためにブランド名がついている。だから、色違いになっていても鮮やかないろんな色を使うのではなくて、できるだけ使われる環境にとってノイズにならない色合いにしています。


色違いをつくるのにグレイッシュな色を使ったのもそのためです。トーンを押さえています。違いが分かるんだけど、それぞれが環境に馴染んでいくようになっているんです。


デザインに正解はない




国によっても違うので世界中がそうだとは思わないですが、いまの日本にはある程度のレベルの生活環境があって、例えばエコロジーという視点はデザインを考える上では当たり前の時代になったんですよね。ユニバーサルデザインという言葉も然り。既にデザインするという言葉の中にそういった視点が含まれなければいけない。


佐藤卓さんインタビュー

自然環境に配慮するという視点が行き過ぎてしまって、人の営みがまるで全て悪いことのような考え方はナンセンスだと思いますね。人間には、普通誰でも欲がある。心地よく暮らしたい。楽しく一生を送りたい。豊かに生活したい。それは誰もが望むことです。


ですから、与えられた環境のなかで豊かに暮らすために、素材を厳選することや贅を尽くすことだけではなくて、生活の環境のなかで、どう心地よい存在にしていくかということもデザインの役割だと思います。


デザインに正解はない。何を軸にして、その都度バランスを取っていくかですね。


いま、ここで必然的に生まれるデザイン



このGUEST & MEのお話をいただいた時に嬉しかったんですよね。本来"使うためのデザイン"より"売るためのデザイン"が優先されてしまっている現状で、"使うためのデザイン"が優先されるべきだなとずっと思ってきたので。まさにそこに当てはまる、きっかけをもらえたような気がします。


そして、大手のメーカーがこういうアイテムに取り組んでいるということがとても意義深いことだとも思っています。大量生産品に真っ向からぶつかっていくのではなくて、中に入っていって何ができるかっていうところを、私の場合ほかの製品も含めて実験しているところがあります。


一つの製品が企業イメージを変える。製品は企業の顔とも言われますが、私も製品そのものがどんな企業広告にもまして最も重要であると思っています。


末永くこの考え方が残って、そして人に届いて、生活の中のデザインを考えるきっかけになったら嬉しいですよね。


GUEST & MEに入浴剤ができたら




いいんじゃないですか! 楽しそうですね。 やっぱりお風呂場周りの環境に馴染むものを探してみたいと思いますね。素材らしさ。あまり主張しない。まわりに溶け込むものに必然的になっていくと思います。その必然性がとても重要です。



日常の"豊かな国"指数が低い日本?



GUEST & MEのように、素材の持ち味を楽しんだり、本当に良い使い心地が追求された日常品に接することが、もっともっと当たり前になっていくべきなんじゃないかって思うんですよね。それが豊かと言うことなんじゃないでしょうか。


高くていいものなんてのは、当たり前じゃないですか。 贅沢な生活をすることが豊かである「豊か=贅沢」という風に、どうしても結びつきがちですが、当たり前のものが当たり前のものとしてあるということが、いかに豊かなことかって思いますね。そのためにデザインができることは何かっていうことをいつも考えています。


当たり前のものが少ないんですよ。そして、普通でいいものが少ない。 当ったり前の普通のものに、すごくいいものが多ければ多いほどその国は豊かなんです。日本は、まだまだですね。この国の本当の豊かさはこれからでしょう。 でもだからこそ、自分はこのデザインの仕事をこれからもやりたいと思うんです。


佐藤卓さんインタビュー

GUEST & MEが少しずつ、より多くの人に届いてくれたら嬉しいです。



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佐藤卓さん
http://www.tsdo.jp/
東京芸術大学デザイン科卒業、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。以後、グラフィックデザインを中心に商品開発、パッケージデザイン、プロダクトデザイン、TV番組アートディレクション等の幅広い領域で活動。主な仕事として、ウイスキー、チューインガム、牛乳、化粧品等の商品デザイン、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」のアートディレクション、大量生産品をデザインの視点で解剖する「デザインの解剖」プロジェクトなどがある。2007年より六本木ミッドタウン内にできた21_21 DESIGN SIGHTのディレクターとして就任。

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