こんにちは、verita編集部です。
今回は、GUEST & MEのプロダクトデザインを担当されたグラフィックデザイナー佐藤卓さんに、GUEST & MEシリーズのデザインに込められた考えや思いについてお話を伺いながら、「日常を心地よくするデザイン」のヒントを見つけてみたいと思います。



佐藤卓、GUEST & MEとの出会い




私が、GUEST & MEに携わったのは、糸井重里さんと電通がコンセプトを立ち上げられて、ある程度企画全体がみえたくらいの時からでした。具体的なデザイン、それから商品開発のアイデアまで、どういったアイテムをつくるかというところを含めて、参加させてもらいました。

佐藤卓さんインタビュー


"心地よいデザインのあり方"をGUEST & MEのデザインに託して




GUEST & MEシリーズのデザインを考える上で大きく影響しているのが、GUEST & MEの流通がかなり特徴的だということでした。"いいもの"にこだわっているお店だとか、Webサイトから本当に欲しい人たちだけに届けるというやり方ですね。


なぜかというと、大量生産品をデザインする場合には通常、ドラッグストアなどの店頭に並ぶので、まず商品そのものが店頭で目立つことがデザインにおいて最も優先されてしまいます。目に留まらなければ当然購入もしてもらえないですから。


でも、店頭で目立つ商品が生活空間でどう見えるかといったら、日常では目立ちすぎなわけです。いま日常の身の回りには、売るためにデザインされたもので溢れているので、本当に自分が生活する空間が心地よいかっていうと、意外とそう思ってない人が多いんじゃないかと思いますね。


本当に生活のなかで心地よさを感じたり、生活空間に馴染むデザインっていうのは、店頭で目立つようなデザインではないはずです。GUEST & MEのお話をいただいた時、そういう売れるようにデザインすることが優先される環境に対する問題意識を、このシリーズに向けることができる。そう思いました。


佐藤卓さんインタビュー

生活空間で心地よいデザインとは?



GUEST & MEシリーズを計画していた時には、既にインテリアに対する意識の高い人が増えている頃でした。目黒通りには家具の店がたくさんでき始めていましたし、雑誌を開けばインテリア特集をやっていたり。自分の好きな個性的な空間づくりをして、ありとあらゆる生活空間が生まれ始めている中で、それぞれに馴染むものを準備することが必要だと感じていました。


それでいうとこのラインは、店頭で競争する必要もないので、個性をある程度、抑えるデザインが可能なわけです。生活空間のノイズにならない、生活の中での心地よさや、いろんな環境に馴染むデザインになっています。


ここで「デザイン」というと、そのものが強い個性を持っていないといけないっていう概念がありますけれど、私は本当にそうなのだろうかってずっと思っているんですよね。 だってティッシュの箱が自己主張して生活空間で目立つ必要って全然ないですよね?(笑) または、冷蔵庫がどれだけ目立つ必要があるのかどうかってことなんです。


佐藤卓さんインタビュー

だからGUEST & MEのデザインを手掛けることになった時、すごく可能性を感じました。大量生産品の"競争しなければならないデザイン"とはまったく違うフィールドでデザインができるっていう。まさに、わくわくする感じですよね。


そして、本当に多くの人が欲していて、プレゼントとしても喜んでもらえるようなアイテムっていうのは、シンプルで自分の生活空間にすっと馴染む。そして、本当に使いやすさを実感できる。商品自体が自分をわきまえているような。そんな日常品なんじゃないかと思うんですよね。


つくりたての新鮮さを閉じ込めた石鹸のカタチ




GUEST & MEの石鹸って、つくりたての新鮮さが特徴的ですよね。"生タイプ"っていう新しい考え方。それって、すごく面白いなって思いました。じゃあ、新鮮、フレッシュなものって、デザインとしてどうあるべきだろうか?


例えば、スーパーマーケットに行ってみるとよく分かるのですが、新鮮に見える野菜とそうでない野菜を、結構みんな知っているわけです。多くの人が知っているそこのところの世界観から「新鮮である」という部分を抽出してくるわけです。


フレッシュな野菜は、人の手が加わってゴテゴテしたデザインの中にあっても決してフレッシュに見えない。人の手が加われば加わるほどフレッシュに見えない
そう、実は、あまりデザインしていないってことが新鮮でフレッシュに見えるポイントなんですね。


切り立てをそのままお届けする



GUEST & MEのこの石鹸ですが、切っただけのカタチになっています。


石鹸は工場で、はじめ一本の棒状になって練り器から出てくるのですが、もうそれは切るだけでいいんじゃないでしょうかって思ったんです。


ほら、よく「切ったままお出しする」っていうのがありますが、どこか新鮮なイメージがするでしょう。いろいろ検討したのですけれど最終的には、余計なことをしない。というカタチに決まりましたね。


そのシンプルさは、素材の質感を生かすことからはじまる



次は、「どう包装していくか」ですが、生活のどんな環境にも馴染むように個性を抑えた上で、素材の質感を引き出すということを考えました。


紙であれば紙らしさ、アルミの包材であればそのアルミの包材らしさです。素材っていうのは、その素材が特徴を持っているので、本来持っている質感の良さを殺さないデザインをするということが重要なんだと思うんですよね。豊かな生活って、"素材らしさを楽しむ"ということではないのかと、ずいぶん前から思っています。


佐藤卓さんインタビュー

それは日本古来の生活のそこここに見えてくるものですけれども、環境にいただいた質感の良さをできるだけ引き出して生かすのが、環境に対する正しい姿勢なのではないかと考えます


佐藤卓さんインタビュー

「デザイン」は「余計なことをしない」



「デザインする」という言葉は、とても能動的な言葉であるがゆえに、発する側にとっても受け取る側にとっても、ある意味とても危険な言葉なんです。


「デザインは、余計なことをしない」というのが、すべてのことにいま大切であるような気がしています。環境にあるものは素晴らしいものであるという前提で、それをどう生かすかというのがデザインにとても重要で、そこに何かをくっ付けることではないと、かねがね思っているんです。だから、デザイナーはできるだけ「デザインしない」ように心がけることですね。


読者のアンケートの結果でも「使いやすい」だとか「ギフトとしても喜ばれる」という意見がたくさん出てきたそうですが、もし多くの人がGUEST & MEのデザインをそんな風に気に入ってくれているのなら、これは本当に嬉しいですね。


"素材本来の持つ質感を生かした、心地よい存在"、その試みがちゃんと人に届いているとしたら、お役に立てているかもしれません。




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佐藤卓さん
http://www.tsdo.jp/
東京芸術大学デザイン科卒業、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。以後、グラフィックデザインを中心に商品開発、パッケージデザイン、プロダクトデザイン、TV番組アートディレクション等の幅広い領域で活動。主な仕事として、ウイスキー、チューインガム、牛乳、化粧品等の商品デザイン、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」のアートディレクション、大量生産品をデザインの視点で解剖する「デザインの解剖」プロジェクトなどがある。2007年より六本木ミッドタウン内にできた21_21 DESIGN SIGHTのディレクターとして就任。

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