ウィーンといえば“音楽の都”。でも、音楽だけでなく、さまざまな文化が花開いた街でもあることはご存知の通り。ここにも、文化や芸術を愛し、保護してきたハプスブルク家の豊かな精神が大きく影響しています。ハプルブルク家が統治した約800年の間には、様々なアートが収集され、長い時を経て今なお輝きを放ち続けるそれらの至宝たちとは、市内に点在する美術館で対面することができます。例えば、シェーンブルン、ベルヴェデーレ、ホーフブルクの各宮殿。それぞれ美術館としても素晴らしい役割を果たしています。これまで教科書の上で観てきたような人類遺産級のアートを実際にこの目で鑑賞できるだけでも有り難いのに、歴史的な建物の内部を見学できるという光栄にも預かることができるのですから、ウィーンに来たら美術館めぐりをしない手はありません。

アルベルティーナも、ホーフブルク王宮の一角にある宮殿美術家のひとつ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラフェエロ、ミケランジェロ、ルーベンス、レンブラントなど名だたる画家の作品がさりげなく展示されているのにびっくり。

なかでも、ここのコレクションの目玉のひとつ、デューラーの「うさぎ」は必見。まるで、絵の中からぴょんと跳び出してきそうな、キュートでリアルなうさぎの姿に目が釘付け。特に、息を吹きかけたらふんわりと波打ちそうな、柔らかい毛の質感が見事。思わず手を伸してその温もりに触れたくなるほどの生命力を放っていました。

映画『バベル』でも再び脚光を浴びた「バベルの塔」他、世界一のブリューゲル・コレクションを誇る美術史美術館(オーストリア航空の半券で入場無料に!)も見逃せません。美術品の収集において、世界で最も豊かで優れているとの評価を持っているそう。ここは、皇帝家が所蔵していた膨大なコレクションの収納庫として、1872年~1891年にかけて建てられたそう。重厚で美しいインテリアを誇るこの建物が、収納庫だったとは気の遠くなるほど贅沢なお話です。
2001年、リンク外にはかつてハプスブルグ家の所有する名馬の厩だった建物を再生させて誕生した複合美術施設ミュージアム・クオーター(MQ)も、アート好きなら必ず訪れたい場所。約6万平方メートルの敷地内には、シーレやクリムトを所蔵するレオポルト美術館、ウィーン・ルートヴィッヒ財団近代美術館、クンストハレなどが集まっています。どうやらここは地元の人々の憩いの場のひとつでもあるらしく、オブジェが置かれた中央の広場には、恋人や友人、家族同士でゆったりと語らっている姿や、子供たちが駆け回る姿が見られ、とてもほのぼの。
アートを特別なもの、敷居の高いものと考えず、身近に感じているウィーンの人々の豊かな日常が感じられました。

いずれも広大な美術館。つい夢中になって何時間も歩き回ったりして疲れてしまうかもしれませんが、心配はいりません。以前もご紹介しましたが、美術館には素敵なカフェが併設されているところも多いのですから。
アルベルティーナには、7,ああ誘惑のウィーングルメに登場したブティックホテルDO&COと同じ系列のカフェ「DO&COアルベルティーナ」が。スタイリッシュな内装と定評のあるメニューでゆったり。今はもう寒いですが、夏場ならテラス席もおすすめです。
美術史博物館の中央ドームの下には、豪華で気品ある雰囲気の中、コーヒーや軽食、もちろんケーキも楽しめるカフェスペースが。
ここは美術品が並ぶ部屋に囲まれているので、鑑賞に疲れたら優雅にひと休みをして、またフレッシュな気分でアートに向き合えるのが嬉しい。例え疲れていなくても、この近くにやって来たら、容赦なく鼻をくすぐるコーヒーの芳香に抗うことなど不可能なのですが。
クリムトの「接吻」がたたずむべルヴェデーレ宮殿をはじめ、すでにこのブログでご紹介したアート・プレイスの他にも、リヒテンシュタイン、応用美術博物館、クンストハウス・ウィーンなど興味深い場所がいっぱいです。行くべきところがありすぎて、旅行での限られた時間が恨めしくなることも(笑)。でも、冷静に。見たいものリストを作り、優先順位を決めれば、効率よく回ることができるはずですから。
こういった国宝級のアートを所蔵する美術館ばかりが、この街のアートシーンをエキサイティングにしているわけではありません。市内には小さなギャラリーも多く存在しています。6,ウィーンへ飛んで にも登場したシュピッテルベルク界隈は、歩けばモダンアートや写真のギャラリーにぶつかるエリア。

散歩中に気になる作品に出会ったら、ふらりとギャラリーに入りましょう。お気に入りの新進アーティストを発見するのも興奮ものです。

今回、私がシュテファン寺院近くの横道に入った際に見つけたのが、SUPPAN CONTEMPORARY(Habsburgergasse 5)という現代アートのギャラリー。30年ほど前にSUPPAN夫妻が開いたギャラリーで、かつては古典も扱っていたそうですが、ここ8年ほどは現代アートを中心に紹介しているのだとか。才能を感じた若いアーティストたちに発表の場を提供し、活躍を応援しているのだと、オーナーのSUPPAN夫人がとても親切に教えてくれました。立ち寄った日には、スロベニアの若手写真家EVA PETRICのセルフポートレートを展示中。今回の作品は、アーティストが準備から撮影、仕上げまで、ほとんど全てを一人でこなした渾身のものだそう。まっすぐとした被写体(フォトグラファー)の瞳とユニークなアングルに、若々しいパワーが感じられました。すでに売約済みのシールが貼られている作品も多かったのもすかさずチェック。アートで食べていくのは大変なことでしょうが、応援者との出会いは、若手アーティストにとって今後を左右する大きな転機になるのでしょうね。
美術館と違って、ギャラリーならば価格次第では気に入った作品を購入することも可能です。でも実は、ここウィーンでは、ハプスブルク家の至宝が入手できるチャンスを提供している場があるとこをご存知ですか? それは、国営質店のドロテウム。日本でイメージする質屋とは違い、ネオ・バロック様式の美しいオークションハウス。大小あわせて年間約600回ものオークションが行われているというから驚き。誰でも参加できるので、覗いてみるのも面白そう。今回は行かれませんでしたが、次回はぜひにと思っています。

でももし、「もっと気楽に」というのであれば、アンティークショップがおすすめ。私が、今回の旅での最も気に入ったおみやげのひとつを見つけたのは、ステファンさんのお店でした(Habsburgergasse 14)。このアンティークショップは、品揃えこそさほど多くはないけれど、小さなウィンドーに小さな小さな動物の置物がずらりと並べてありました。
そこで、色違いではありますが我が家の愛犬に似たキュートなパグを発見! ステファンさんにお願いして、手に乗せてもらうと、高さわずか3センチほどの小さな小さなパグはけっこう重い。なかなかの代物であることを、重みの中に感じ取り、「結構高いかも」と覚悟しながら値段交渉開始。その結果、もともと50ユーロ(8400円程度)でしたが、何度かのやり取りの後、「もうこれ以上は無理です……」というステファンさんの悲しそうな声を合図に、37ユーロ(約6216円)で握手。どちらもご機嫌に商談を成立させたことで、おしゃべりも弾みました。
看板犬ダックスフントの話から、ウィーン国立オペラ座の音楽監督であるマエストロOZAWA(小澤征爾氏)の話まで…。どこへ行ってもアートの話で盛り上がることのできるウィーン。やはり、ここは芸術家たちの魂が宿る豊かな“芸術の都”なのです。





