いよいよ今日は、ウィーンへ移動。プラハも素敵な街だったけれど、朝からすでに気持ちはウィーンに飛んでいます。プラハからウィーン空港までは、40分ほどの短いフライト。オーストリア航空なら、日に4便も運行しているので、好きな時間を選べて便利。個人旅行には最適です。
今回は、午前中の便をチョイス。11時40分に出発し、昼過ぎにはもう着いてしまうのですから、ヨーロッパの旅は快適の極み。飛行機に乗るとすぐに、窓からヴァルタヴァ川のうねりに沿って美しく広がるプラハが見えます。今更ながら、ちょっと寂しくなったりして。今度はいつ来られるかしら、と。とはいえ旅人というのは身勝手なもの。数分後には、ウィーンでは「あれを観たい」「これを食べたい」と期待が胸に広がっていきます。ガイドブックを手にとって、ゆっくりとその期待に身を任せたのでした。

そうこうするうち到着したのが、3日前に乗り継ぎをしたウィーン空港。ここから市内までの移動には、CAT(City Airport Train)を使うことに。海外に来ると不案内なせいもあって、つい「空港から市内まではタクシーで」と思ってしまうけれど、ウィーンでは便利で早いこの直通列車が断然おすすめ。空港とウィーンの中心部であるミッテ駅までを、何と16分で繋ぐという驚きの速さ。チケット(9ユーロ)は空港内の券売機で簡単に買え、駅は空港のすぐ下。エレベーターで階を移動すれば、そこはもうプラットフォーム。初めてなのに迷うことも、手間取ることも一切なく、やってきたCATに無事乗り込みました。楽で、便利で、清潔で、その上ゆったり広々していてとても静か。しかも、この列車にも犬が客席に同席。やはりウィーンも、ヨーロッパの他の都市と同様に、犬に優しい街のようで、なんだか嬉しくなりました。

田園風景が次第に賑やかになってくる車窓の風景を飽きもせずに見ていると、すぐにミッテ駅到着を知らせるアナウンスが。わかっていたとはいえ「もう?」という感じ。結局、遅いランチにまだまだ間に合うという時間に、市内に着いてしまったのでした。
ホテルに着いて、荷解きをするとすぐに出かける支度を。少しぐらいは休もうかとも思いましたが、窓から街並みを見ているといてもたってもいられなくなるもの。とにかくウィーンの空気を吸ってみたいと、あてもないのに飛び出しました。ランドマークが無数に存在するウィーンですが、とりあえず歩けそうな距離に位地するオペラ座まで行ってみることに。ホテルを出て、旧市街地を環状にぐるりと囲む道路、リンクにぶつかったら、ずんずんオペラ座方向へ進むのみです。

すると、不思議な感覚にとらわれました。生まれて初めての場所を歩いているというのに、不安も違和感も全くなし。むしろ、確信めいた気持ちを抱えながら、目的地へと向かっていけるのです。これはもちろん、市内をぐるりと回る路面電車が目安となってくれているせいもあるでしょうし、さんざんガイドブックを見ていたせいもあるでしょう。でも、旅人が降り立ってすぐに馴染める、その街の位置関係を感覚的につかめるというのは、なかなか体験できないもの。なんだかウィーンって旅人に優しい! そう実感したのと同時に、「この街、大好き」という恋心のようなものも芽生えていることにも気がつきました。
まだ観光など全くしていないというのに。まさに、これが一目惚れというものなのでしょう。
インペリアル・トルテでも有名なインペリアル・ホテルの前を通り、トルテに気をとられながらも、まずは行き着いたオペラ座。観光客も多く、人が大勢行き交っていますが、街特有の“雑踏”や“喧騒”があまり感じられません。車の量も、東京に比べればかわいいもの。それなのに道幅が広い。建物と建物の間の空間も贅沢に取られているせいか、全体的に街は広々としています。小さい街だといわれるけれど、狭苦しい感じは一切なし。そんな見事な都市計画のせいもあるのでしょうか。ゆったりとしていて緑も多いウィーンの街並みは、プラハより洗練されているという印象です。
その街をとりあえずぐるりと一回りしたくて、今度は路面電車でリンクを回ってみることに。

オペラ座を起点に、美術史博物館や王宮の横を通り、市庁舎公園、ウィーン大学、ドナウ運河にぶつかったら、しばらくそれに沿って走り、市立公園へ。するともうすぐ、再びオペラ座が見えてきます。これで、即席観光のできあがり。
明日は主要な観光地を周るつもりなので、良い予習ができました。路面電車には右回りと左回りがあるそうなので、両方乗ってみると違った風景に出会えるに違いありません。
リンクを一周したら、二周目は気になるところで降りてみることに。するとオペラ座を行過ぎてすぐ、気になる巨大建造物が左手に。これが、ハプスブルグ家の厩だったという建物を改築した複合美術施設MQ。実はこの裏手に気になっている地区があるので、ここで下車。MQの敷地内を通り抜け、行き着いたのが目的のシュピッテルベルク地区。こじんまりとしたムードのある石畳の小路に、ギャラリーやレストラン、気になる雑貨店などが並んでいます。
夏から秋に変わる過しやすいこの時期に、オープンテラスでお茶でも飲んだら気持ちが良さそう! いや、飲むならワインかな……。

この辺りは、ところどころに面白いギャラリーやお店が点在しているので、ぶらぶらと、あてもなしに歩いてみても楽しそう。安全なウィーンでは、路地裏に迷い込むのも大歓迎。シュピッテルベルグ界隈なら、絶対に面白いものが見つかるはず。

かく言う私が遭遇したのは、道にたたずむ体重計。「なんで? どうして?」。訳がわからないながらも、とりあえず乗ってみたくなるのが好奇心。お金を入れると動くとか、動かないとか。でも、こういう不思議に出会えるのだから、ほんとうに異文化というのは面白いものです。
さらに、こんなカフェも発見。お店で使っているインテリア(家具や照明を含む)は全て商品で売り物だというダス・メーベル。椅子もテーブルもひとつひとつスタイルの違うものが置かれているので、座ってみて気に入ったら買うこともできるという体験型インテリアショップでもあるというわけです。それだけに、とてもスタイリッシュな空間。ギャラリーが多く、ちょっとアバンギャルドな香りも漂うこの界隈に良く似合っています。
明日からは、有名な老舗カフェも巡る予定なので、伝統とモダンの両方をじっくり見て、感じたいと思います。





賑やかなケルントナー通りには、ハイナーやゲルストナーなど、王室御用達菓子店が集まっていますが、私が一目惚れしたのが街のシンボル、シュテファン寺院近くのチョコレートショップ、アルトマン&キューネ。引き出し型や本型など、カラフルな柄がプリントされた小箱に、小さな一粒チョコレートがいくつも詰め込まれた宝箱のような商品で有名。店内にはマジパンで作られた動物なども飾られているので、まるで人形の国を訪れたよう。あまりにも、非現実的で愛らしいお菓子に囲まれてなんだか夢心地でした。 



私のお勧めは、パルメンハウスとカフェ・ハヴェルカ、そして右の写真のシュテファン寺院の正面にあり、絶好の角度から眺められるDO&COホテルのバー・オニキス(昼はカフェ)。 

私が立ち寄った日は、オーナーのハヴェルカおじいさんが入り口近くで静かに座り、「どうぞお座りください」と招き入れてくれました。「どこから来たんですか?」 「日本からです。噂には聞いていたけれど、素敵なお店ですね……」などとお話をすることしばし。優しいハヴェルカさんと出会ったことで、よけいにここから去りがたくなってしまいました。もう二度と会うこともないかもしれない人々。でもそんな人々と言葉を交わす一瞬一瞬も、旅がくれる宝物なのだと実感。 
食事の質も高いと先ほど言いましたので、お食事についてもお話を。ウィーンといえば、シュニッツェルと思っていた私。確かに有名なのですが、当然ながらその他にももっといろいろ種類はあります。地元の人に紹介された市立公園近くのGmoaKella(1858年オープンとか)では、ウィーンの伝統料理がいろいろ楽しめるので、日本でも食べられるシュニッツェルはぐっと我慢。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が、何と毎日食べるほど好きだったというターフェルシュピッツをオーダーしてみました。茹で上げたとろとろの牛肉に野菜、西洋わさびと一緒に。ボリュームがあるのに、あっさりした味。しかもわさびの程よい辛味が肉の甘みと絶妙に混ざり合って、食がすすみます。柔らかくて、噛むほどに旨味が口いっぱいに広がるおいしさ。皇帝のお気に入りだったのも頷けます。ラムのコトレットや牛肉の煮込みグーラッシュも舌の肥えたウィーンの市民を満足させてきた伝統を感じます。
レストランではもちろん、デザートも無視できません。しっかり食べたのに、ずっしりとしたアップルパイ、アップルシュトルーデルもちゃんと完食。ダイエットのことを考えるなど、ウィーンでは無粋なことと割り切るしかありませんね。
ジュースとワインの間の状態なので、口当たりもよくゴクゴクと飲めてしまうのですが、まだ醗酵途中なので、体に入った後でお腹にいたずらをするそう。多く飲みすぎると酔いが回って頭がクラクラしたり、お腹が痛くなったり…。だから、嵐という意味のシュトルムと名づけられているとか。日本人にとっての桜のようなもので、毎年、出回る時期が変わるそう。人々はこれを待ち望み、これによって季節の移り変わりを感じるのだそうです。毎日味が変化するうえ、栓をして運んだりすると爆発(破裂?)するので、輸出ができない。一年に一度のちょうどよいタイミングで出会えたのはラッキー。
シュトルムは、レストランだけでなく、市場でもボトルが並んでいるのをみかけました。市場といえば、有名なのはナッシュマルクト。ここに来ると、ウィーンの胃袋を支えるありとあらゆる新鮮な食材が並んでいるので、時間があれば覗いてみることをおすすめします。きっと、オーストリアの美味しさの秘密に出会えるはずですよ。 



残念ながら、庭園はお手入れ中でネットなどがかけられていたけれど、ここに来た目的は美術館(特に上宮の)を見るためだったので、めげずに上宮へ入ります。そして、ゆっくりと目的の絵の前へと―。それは、グスタフ・クリムトの官能美溢れる作品群の中でも特に人気の高い「接吻」。男性に抱きすくめられ、愛情いっぱいの接吻を受ける女性の顔はうっとりとしていて恍惚状態。ここから発せられる愛のオーラに、なんだか心がポカポカしてくるよう。ゴールドを使った色使い、立体的なテクスチャーといい、これはまさに絵画の宝石。後で聞いた話では、「接吻」はかなり頻繁に海外に貸し出されるそうなので、不在のことも多いとか。生で見られたのは、幸運とのことでした!





2001年、リンク外にはかつてハプスブルグ家の所有する名馬の厩だった建物を再生させて誕生した複合美術施設ミュージアム・クオーター(MQ)も、アート好きなら必ず訪れたい場所。約6万平方メートルの敷地内には、シーレやクリムトを所蔵するレオポルト美術館、ウィーン・ルートヴィッヒ財団近代美術館、クンストハレなどが集まっています。どうやらここは地元の人々の憩いの場のひとつでもあるらしく、オブジェが置かれた中央の広場には、恋人や友人、家族同士でゆったりと語らっている姿や、子供たちが駆け回る姿が見られ、とてもほのぼの。
ここは美術品が並ぶ部屋に囲まれているので、鑑賞に疲れたら優雅にひと休みをして、またフレッシュな気分でアートに向き合えるのが嬉しい。例え疲れていなくても、この近くにやって来たら、容赦なく鼻をくすぐるコーヒーの芳香に抗うことなど不可能なのですが。


そこで、色違いではありますが我が家の愛犬に似たキュートなパグを発見! ステファンさんにお願いして、手に乗せてもらうと、高さわずか3センチほどの小さな小さなパグはけっこう重い。なかなかの代物であることを、重みの中に感じ取り、「結構高いかも」と覚悟しながら値段交渉開始。その結果、もともと50ユーロ(8400円程度)でしたが、何度かのやり取りの後、「もうこれ以上は無理です……」というステファンさんの悲しそうな声を合図に、37ユーロ(約6216円)で握手。どちらもご機嫌に商談を成立させたことで、おしゃべりも弾みました。