プラハで迎える2回目の朝。時計を見ると7:00AM。今日は昨日よりさらに早く目が覚めてしまった! こういうときは散歩に限る、と朝食前に旧市街広場までぶらぶら歩いてみることに。
今日のプラハはちょっと曇り気味で、空はねずみ色。空気はかなりひんやりとしています。ゴミトラックや石畳を修復する職人、通勤途中の男女、犬の散歩をするおじさまが行き交う路地を抜け、旧市街広場に着くと、そこは驚くほど静かで広々。さすがに観光にはまだ早いせいか、地元の人が足早に通り過ぎるだけ。
すまし顔のプラハも、朝だけは素顔のプラハに戻るよう。観光客で夜遅くまで賑わう夢のような街が、ちょっと身近に感じられます。

まずは、美しい街並みで有名なパジージュスカー(パリ通り)へ。ここは、中世の頃からユダヤ人街だったところで、19世紀末にはゲットーを取り壊し、新しい大通りを建設した場所。つまり、プラハでは比較的新しい建物が並んでいるのです。その名からもわかるように、パリを参考にした通りだそうで、ここはまるでシャンゼリゼ。両側には、ディオール、エルメス、カルティエなど高級ブティックが入ったアール・ヌーヴォー建築が立ち並んでいます。植物や昆虫をモチーフにしたレリーフや門扉は妖艶に美しさを主張。天使や女性のレリーフが、通行人を見下ろしています。プラハというのは、アール・ヌーヴォー建築が多いせいか、街中を歩いていて、ふと視線を感じ辺りを見回すと、建築からいろいろな顔がこちらを見ている…ということも多いのですが、この通りは特に凄い。
視線、感じます。

プラハで最も有名なアール・ヌーヴォー建築といえば、1911年に完成したオベツニー・ドゥーム(市民会館)。美しい街並を誇るプラハにおいても、その“美貌”は際立っています。
ここは、コンサートホールやカフェなどがある文化ホールで、チェコのアーティスト、アルフォンス・ムハ(ミュシャ)も装飾を施したことで有名。ムハが手掛けた部屋もあるそうだけれど、内部は見学ツアーに参加したり、コンサートに行くなどしないと見られないとか。残念! でも、エントランスの装飾だけでも見る価値あり。せっかくなので、1Fのお洒落なカフェで一休み。どっぷりと20世紀初頭のブルジョワ世界に浸ってみました。本当にため息が出るほどゴージャスです!!
ところで、ムハといえばチェコが誇るアーティスト。チェコアートと言われてぴんと来ない人でも、絶対知っているのが彼の作品。花や草、果物などに囲まれて、うっとりとした表情を見せる官能的な美女の画は、私のお気に入りでもあります。
ミュシャというフランス語読みの呼び名が広がっているのは、パリで活躍したため。女優サラ・ベルナールのポスター制作で有名になり、グラフィックアーティスト、デザイナーとして国際的に大活躍しましたが、故郷のためにも尽力。
新貨幣や切手などのデザインも手がけていたのだとか。

今も大人気の彼は、当然ながらチェコの誇り。街を歩けば彼のポスターに出会いますし、プラハ城内の聖ヴィート大聖堂のステンドグラスにも彼の作品が(左側、入って3番目)。そんなことからも、彼がチェコの人々にとってどれほどの存在かわかります。プラハに来たら絶対に立ち寄りたかったムハ美術館では、家族が提供した貴重なコレクション(何と写真作品も!)、偉大な功績がわかる映像作品も見られ、大満足でした。

チェコアートといえば、ムハしか意識したことはなかったけれど、実は、馴染みのあるものがいっぱい。チェコアニメもそのひとつ。その代表格が日本でも映画が公開されたキュートなクルテク(正体はいったい何?)。ぬいぐるみ、Tシャツなどが多くのお店に飾られていました。はっきりいって、プラハはクルテクだらけ。いえクルテクだけではありません。アニメ文化のせいなのか、街にはチェコ独特の素朴なアニメーション・キャラクターを髣髴させる可愛らしいグッズがいっぱい。

人形劇文化もあいまっているのでしょうか、パペットやおもちゃなどのお店が多いのも目に楽しい。プラハがおとぎの国のような印象を受ける理由のひとつは、笑顔で旅人を迎えてくれるキュートな住人たちのおかげなのかもしれません。

この他にも、社会主義の名残を感じさせるプロパガンダ・アートなどチェコのアート界には興味深いものが沢山ありますが、私に言わせればアンティークショップを回るのも、一種のアート探索。

ガラクタだってもちろんありますが、過去からの貴重で素敵なメッセージを伝える古物の数々もあるものです。たまたま見つけたショップをぶらりと覗いてみるというのが気分。それは、ショップとも、アンティークなグッズとも、「出会い」を大切にしたいから。

今回の旅では、プラハ城近くのマラーストラナ地区でウ・ズラテ・シーチというお店を見つけました。優しい店主ジェトゥカ・カラソヴァさんと話をしながら、昔の書籍やポスター、おもちゃなどを見せてもらうことに。
カラソヴァさんによると、「この建物は14世紀に建てられたの」とのこと。さらりと言っているけれど、それって驚くほど凄いことですよね……。
自分にだけ話しかけてくれたり、響いてきてくれるアンティークグッズを見つけるのは楽しいもの。ひとつとして同じものがないわけですから、じっくりと商品を見つめて、一期一会を探してみる。そうすると、あっという間に時間が過ぎていきます。ああ、どれほど過しても飽きることがない宝箱のようなお店。ここでは、チェコアニメ風のはがきを購入。ひとつは実際に誰かが誰かに送ったもので、優雅な筆跡でメッセージが書かれていました。もちろん、読めませんけれど。

こんなお店があるかと思えば、最近台頭してきているのが、自然派ショップ。
チェコで育った自然素材を使って、石鹸やバスソルト、アロマオイル、食品なども手作りして販売しているのが、旧市街広場近くにあるウンゲルト内のBOTANICUS。店内に足を踏み入れる前から優しい植物や花の香りが漂ってきます。
吸い込まれるようにお店に入ったら、もうそれだけで体も心も休まっていくよう。家族や友人へのお土産に、チェコの香りをと石鹸やソルトを購入。そして、自分のためには、歩きつかれた足を休めるために、アロマグッズを買って帰ろう!
明日のウィーンへの移動のためにも、しっかり疲れを癒しておかないと。

いろいろな所を歩いて回ったプラハだけれど、今回の旅で感じたのは、犬に優しい街なのだということ。朝はもちろん、昼も夜も犬を見かけることがやたらと多く、地下鉄や路面電車にも乗り込んできます。犬好きの私としては、大歓迎ですが。

最も印象的だったのは、カレル橋を歩いていた老夫婦が連れていたパグ。11歳のベビチェック君(チェコ語でこうもりの意味だそう)は、人懐っこくて、頭を撫でると嬉しそうな表情をしてしっぽを振ってくれて。でも、我が家の愛犬、パグの桃太郎を思い出させるので、ちょっと寂しくなってしまいました。「日本の我が家にもパグがいるんですよ」というと、老夫婦と話が弾み……。これぞ、犬を通した国際交流。犬好きに国境はありません。
さて、ウィーンではどんな出会いが待っているのか楽しみ。もちろん、犬だけでなく、素敵な人々との出会いも期待しつつ。