ついにやって来た、この日。
今日で、ウィーンを後にします。旅というのは、出発の何日も前から楽しみにしているけれど、実際に始まってしまうとあっという間。大好きになった街であれば、なおのこと去りがたく、とても名残惜しく感じられるものです。でも、「もう十分!」と満足しきってしまうより、その方が旅情をかきたてられるというもの。朝食をいただきながら、今度はいつ来られるかしらと、もう次の旅の計画を頭に思い描いてみたりして。

童話の国のようなプラハ、ハプスブルク帝国の築いた優雅なウィーンと、豊かな文化が薫るヨーロッパの二ヵ国を訪れてあらためて感じたのは、いずれも大人のための成熟した楽しみがある街だということ。本物を味わいたいなら、もってこいの場所というわけなのです。

余談になりますが、実はプラハからウィーンに来たとき、すぐに感じたのは水の違い。ヨーロッパを旅すると、水が硬いせいですぐに肌がかさついてしまうもので、プラハでは1回シャワーを浴びただけで肌のゴワつきが気になるように。ところが、ウィーンに来てからはそれが全く気にならなくなったのです。その訳は簡単。この街の水道水はアルプスの雪解け水で、19世紀の終わりごろから、フランツ・ヨーゼフ一世の尽力により、清潔な水が安定供給されるようになったのだそうです。水道をひねれば、アルプスの湧き水が流れ出すなんて夢のよう。もちろん、お風呂もこのお水で。どうりで、お肌も調子がいいはず。なんとも贅沢なお話です。そんなわけで、水もばっちり合ったウィーン。午後発の便なので、ゆっくり朝食を食べてから、近くを散歩することに。その前にホテルでチェックアウトを済ませたら、ウィーン市内のミッテ駅でまずエアーのチェックインも済ませることに。この時、重いスーツケースを預けることが可能。その後、空港へ出発するまでの間、手ぶらで市内観光もできるのでとても便利で気持ちも楽々なのです。

路面電車でリンクを回るもよし、カフェで最後の一杯をいただくもよし。私は散歩をすることに。この街には、至るところに公園があるので、あてもなく散歩というのも楽しいのです。最後に選んだのは、ヨハン・シュトラウス像やシューベルト像がある市立公園。ミッテ駅のすぐ横です。写真で見たウィーンの木々は、夏の光にきらきらと輝いていましたが、今は秋の気配も感じられます。ちょっと気は早いですが、ここなら雪景色も美しいだろうなと想像。公園で過ごすのが好きだというウィーンの人々は、豊かな自然の変化を愛でながら、季節の移り変わりを肌で感じていくのでしょう。何もせず、ゆっくり公園で過ごすというのも、東京ではなかなかしないこと。ウィーンの人々を見習って、私も東京でお気に入りの公園を見つけて、季節を感じてみようと思います。

さて、公園を満喫したら、ちょっと早めにミッテ駅からウィーン空港へ。もちろん、行きと同様CATを使って、移動はあっという間の16分。出発までにはまだまだ時間があるけれど、早く来たのには理由があります。出発前の貴重な時間を、ショッピングやコーヒーに使わなかったのは、それに未練がなかったからではありません。

実は、ウィーンの空港はカフェやオーストリアブランドのショップが充実しているのです。もちろん、スウィーツのショップも。特にお買い物は、気になっていたオーストリアブランドのショップが集まっているので、実は市内であちこち回るよりよほど効率が良いのも魅力。デーメルやアルトマン&キューネの生チョコも見つかる「チョコレート・カンパニー」、オーストリアワインが富かにに揃った「ワイン&モア」、クリスタルブランドの「スワロフスキー」も。グラスで有名な「リーデル」などの割れやすいものは、すぐに機内持ち込みができるので空港で買うのが絶対に楽。しかも、空港ならではのスペシャルパッケージも用意されているので、お得です。

その他、ヨーロッパのハイブランドショップも並んでいます。ここのエルメスは、空港内とは思えないほどアイテムが充実。やはり、市内で買い物をセーブしておいて良かった! しかも、ここは空港。手荷物が少しぐらい重くなっても心配いりません。空港といえば、出発までの待ち時間が長いから憂鬱という人もいるかもしれませんが、ウィーン空港は別。やはりここへは、“少し早めに”が、おすすめです。

成田まで直行便で帰れる気楽さも魅力。すっかり満足して時計を見ると、搭乗の時刻は間もなく。出国の手続きをすませ、ゲートまで行くと、オーストリア航空の日本人スタッフが親切に案内してくれます。やはり、個人旅行では日本語の話せる人に会うとどこかほっとするというのが正直なところですよね。

機内に足を踏み入れると、いよいよこの旅も最終章に突入。なんだか寂しくなってくるけど、日本で待っている愛犬・桃太郎に一刻も早く会いたいし……。そんな複雑な想いをかかえながらも、往路同様、オーストリア航空でのフライトを堪能。ウィーンが誇るコーヒー(豆のブランドはユリウス・マインルだそう。お土産にも最適!)もしっかりいただき、日本到着のその瞬間まで旅の余韻に浸ったのでした。

最後の最後まで、安心&快適で大満足だった今回の“Fly via Vienna”の旅。
絶対にまた行きます!








2001年、リンク外にはかつてハプスブルグ家の所有する名馬の厩だった建物を再生させて誕生した複合美術施設ミュージアム・クオーター(MQ)も、アート好きなら必ず訪れたい場所。約6万平方メートルの敷地内には、シーレやクリムトを所蔵するレオポルト美術館、ウィーン・ルートヴィッヒ財団近代美術館、クンストハレなどが集まっています。どうやらここは地元の人々の憩いの場のひとつでもあるらしく、オブジェが置かれた中央の広場には、恋人や友人、家族同士でゆったりと語らっている姿や、子供たちが駆け回る姿が見られ、とてもほのぼの。
ここは美術品が並ぶ部屋に囲まれているので、鑑賞に疲れたら優雅にひと休みをして、またフレッシュな気分でアートに向き合えるのが嬉しい。例え疲れていなくても、この近くにやって来たら、容赦なく鼻をくすぐるコーヒーの芳香に抗うことなど不可能なのですが。


そこで、色違いではありますが我が家の愛犬に似たキュートなパグを発見! ステファンさんにお願いして、手に乗せてもらうと、高さわずか3センチほどの小さな小さなパグはけっこう重い。なかなかの代物であることを、重みの中に感じ取り、「結構高いかも」と覚悟しながら値段交渉開始。その結果、もともと50ユーロ(8400円程度)でしたが、何度かのやり取りの後、「もうこれ以上は無理です……」というステファンさんの悲しそうな声を合図に、37ユーロ(約6216円)で握手。どちらもご機嫌に商談を成立させたことで、おしゃべりも弾みました。



残念ながら、庭園はお手入れ中でネットなどがかけられていたけれど、ここに来た目的は美術館(特に上宮の)を見るためだったので、めげずに上宮へ入ります。そして、ゆっくりと目的の絵の前へと―。それは、グスタフ・クリムトの官能美溢れる作品群の中でも特に人気の高い「接吻」。男性に抱きすくめられ、愛情いっぱいの接吻を受ける女性の顔はうっとりとしていて恍惚状態。ここから発せられる愛のオーラに、なんだか心がポカポカしてくるよう。ゴールドを使った色使い、立体的なテクスチャーといい、これはまさに絵画の宝石。後で聞いた話では、「接吻」はかなり頻繁に海外に貸し出されるそうなので、不在のことも多いとか。生で見られたのは、幸運とのことでした!


賑やかなケルントナー通りには、ハイナーやゲルストナーなど、王室御用達菓子店が集まっていますが、私が一目惚れしたのが街のシンボル、シュテファン寺院近くのチョコレートショップ、アルトマン&キューネ。引き出し型や本型など、カラフルな柄がプリントされた小箱に、小さな一粒チョコレートがいくつも詰め込まれた宝箱のような商品で有名。店内にはマジパンで作られた動物なども飾られているので、まるで人形の国を訪れたよう。あまりにも、非現実的で愛らしいお菓子に囲まれてなんだか夢心地でした。 



私のお勧めは、パルメンハウスとカフェ・ハヴェルカ、そして右の写真のシュテファン寺院の正面にあり、絶好の角度から眺められるDO&COホテルのバー・オニキス(昼はカフェ)。 

私が立ち寄った日は、オーナーのハヴェルカおじいさんが入り口近くで静かに座り、「どうぞお座りください」と招き入れてくれました。「どこから来たんですか?」 「日本からです。噂には聞いていたけれど、素敵なお店ですね……」などとお話をすることしばし。優しいハヴェルカさんと出会ったことで、よけいにここから去りがたくなってしまいました。もう二度と会うこともないかもしれない人々。でもそんな人々と言葉を交わす一瞬一瞬も、旅がくれる宝物なのだと実感。 
食事の質も高いと先ほど言いましたので、お食事についてもお話を。ウィーンといえば、シュニッツェルと思っていた私。確かに有名なのですが、当然ながらその他にももっといろいろ種類はあります。地元の人に紹介された市立公園近くのGmoaKella(1858年オープンとか)では、ウィーンの伝統料理がいろいろ楽しめるので、日本でも食べられるシュニッツェルはぐっと我慢。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が、何と毎日食べるほど好きだったというターフェルシュピッツをオーダーしてみました。茹で上げたとろとろの牛肉に野菜、西洋わさびと一緒に。ボリュームがあるのに、あっさりした味。しかもわさびの程よい辛味が肉の甘みと絶妙に混ざり合って、食がすすみます。柔らかくて、噛むほどに旨味が口いっぱいに広がるおいしさ。皇帝のお気に入りだったのも頷けます。ラムのコトレットや牛肉の煮込みグーラッシュも舌の肥えたウィーンの市民を満足させてきた伝統を感じます。
レストランではもちろん、デザートも無視できません。しっかり食べたのに、ずっしりとしたアップルパイ、アップルシュトルーデルもちゃんと完食。ダイエットのことを考えるなど、ウィーンでは無粋なことと割り切るしかありませんね。
ジュースとワインの間の状態なので、口当たりもよくゴクゴクと飲めてしまうのですが、まだ醗酵途中なので、体に入った後でお腹にいたずらをするそう。多く飲みすぎると酔いが回って頭がクラクラしたり、お腹が痛くなったり…。だから、嵐という意味のシュトルムと名づけられているとか。日本人にとっての桜のようなもので、毎年、出回る時期が変わるそう。人々はこれを待ち望み、これによって季節の移り変わりを感じるのだそうです。毎日味が変化するうえ、栓をして運んだりすると爆発(破裂?)するので、輸出ができない。一年に一度のちょうどよいタイミングで出会えたのはラッキー。
シュトルムは、レストランだけでなく、市場でもボトルが並んでいるのをみかけました。市場といえば、有名なのはナッシュマルクト。ここに来ると、ウィーンの胃袋を支えるありとあらゆる新鮮な食材が並んでいるので、時間があれば覗いてみることをおすすめします。きっと、オーストリアの美味しさの秘密に出会えるはずですよ。 


まだ観光など全くしていないというのに。まさに、これが一目惚れというものなのでしょう。
明日は主要な観光地を周るつもりなので、良い予習ができました。路面電車には右回りと左回りがあるそうなので、両方乗ってみると違った風景に出会えるに違いありません。



ここは、コンサートホールやカフェなどがある文化ホールで、チェコのアーティスト、アルフォンス・ムハ(ミュシャ)も装飾を施したことで有名。ムハが手掛けた部屋もあるそうだけれど、内部は見学ツアーに参加したり、コンサートに行くなどしないと見られないとか。残念! でも、エントランスの装飾だけでも見る価値あり。せっかくなので、1Fのお洒落なカフェで一休み。どっぷりと20世紀初頭のブルジョワ世界に浸ってみました。本当にため息が出るほどゴージャスです!!






カラソヴァさんによると、「この建物は14世紀に建てられたの」とのこと。さらりと言っているけれど、それって驚くほど凄いことですよね……。
チェコで育った自然素材を使って、石鹸やバスソルト、アロマオイル、食品なども手作りして販売しているのが、旧市街広場近くにあるウンゲルト内のBOTANICUS。店内に足を踏み入れる前から優しい植物や花の香りが漂ってきます。








まずは、旧市街とユダヤ人街を繋ぐ場所にある旧市街広場へ行ってみることに。
なるほど、これが仕掛けで有名な天文時計。毎日、朝9時~21時まで1時間ごとに動くとか。時刻は9時10分前。もう少し待てば、今日最初のショーが始まるのですから、待たないという手はありません。そして、9時ちょうど。時計横の骸骨像が鐘を鳴らすと、二つある窓が開き、十二使徒がお行儀良く顔を出す。彼らの挨拶が終わると、てっぺんにある金の雄鶏が元気良く鳴いて終了。人々は歓声をあげ、拍手を送って散っていくのです。プラハに来たら、一度は観たいと思っていた仕掛け時計。なんだか幸先がいいみたい。









